(4)怒りが女性を駆り立てる トランプ政権への「怒り」を票に結びつけられるか

2018/08/09 21:18

 トランプ米大統領の女性蔑視発言やセクハラ告発運動「#MeToo」(私も)が女性を選挙に駆り立てている。人工妊娠中絶に賛成する女性民主党議員を増やすための最大の政治資金管理団体「エミリーズ・リスト」に、11月の中間選挙を前に出馬希望者の女性が殺到し、2年前の大統領選前の40倍以上、約4万人になった。

 「大統領選で初の女性大統領の誕生を信じたが、勝ったのは女性蔑視発言のトランプ氏。喪失感と怒りが女性たちを動かしている」

 エミリーズ・リストの報道担当者、アレクサンドラ・デルーカ氏はこう分析する。

 この団体は、2016年大統領選で民主党候補のクリントン元国務長官が敗れた後、有力候補の勧誘に力を入れた。16年は大統領選や議会選などに過去最高の約9千万ドル(約100億円)を注いだが、中間選挙でもこれに匹敵する資金を投入し、上下両院選で69人、州議会選なども含め350人以上の女性を支援するという。

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 ラトガース大の「米女性と政治センター」によると、今回は予備選を含め女性の候補者数が上院54人、下院476人と16年に比べて大幅に増加。1992年、前年に発覚した最高裁判事候補によるセクハラ疑惑への抗議活動で女性候補が増え、当選者が2倍近くになった「女性の年」になぞらえられる。下院選の民主党予備選ではニューヨークでアレクサンドリア・オカシオコルテス氏(28)が党重鎮の男性を破ったことが注目を集めた。

 同センターのデビー・ウォルシュ代表は「今回はトランプ氏に反発した政治経験のない新人の出馬が多く、現職に勝つことは厳しい」と予測。現在約20%の女性下院議員を25%に増やせれば「女性たちの勝利」とし、こう付け加えた。

 「今回の選挙はあくまでも第一歩です。ソーシャルメディアなどで女性たちが政治に関心を持ち続けることが次につながる」

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 ニューヨーク近郊の下院ニュージャージー州第11選挙区の民主党新人マイキー・シェリル氏(46)は女性の議席増を託される一人。4児の母で海軍ヘリパイロット、連邦検察官の経歴を持ち、エミリーズ・リストの支援も受ける。

 

 四半世紀近く議席を守った共和党現職の引退表明を受けた戦いは、民主党の下院奪還に直結する重要選挙の一つだ。世論調査で支持率が数ポイントリードしているとされるシェリル氏は、共和党新人ジェイ・ウェバー州議会議員(46)への攻撃を強める。

 「彼は女性の賃金を男性と同等にする州の法案に反対した数少ない議員だ」

 地元メディアによると、シェリル氏は7月の集会でウェバー氏の女性施策への姿勢をこう批判した。同月、施行された法律は男女差別を受けた従業員への賠償規定を充実させた「全米で最も厳格な同一賃金法」(地元メディア)。ウェバー氏は「企業経営が厳しくなる」と主張していた。

 ウェバー氏も負けてはいない。トランプ政権の税制改革が中間層の利益にならないと主張するシェリル氏を「米国の経済が上向いているのは最近の減税措置のおかげだ。シェリル氏は批判することしかできない。希望に満ちた状況でも悪いことを探そうとするのはやめるべきだ」と批判した。

 

 女性有権者の見方は分かれている。ヨガ講師エレイン・パターソンさん(63)はシェリル氏の勝利でトランプ氏に「ノー」を突き付けたい考えで、「トランプ政権の存在は女性や移民にとり大きな損失だ。選挙活動は何でも手伝う」という。一方、自営業の女性(52)は「経済が上向いているので、トランプ氏の実績を純粋に評価すべきだ」と語った。

 米公共ラジオ(NPR)の最近の調査では都市近郊で女性のトランプ氏への不支持率(68%)が男性(41%)に比べて突出して高い。女性に関心の高いテーマで政権への「怒り」を得票に結びつけられるかが、シェリル氏ら都市近郊で戦う女性や民主党の戦いの行方を左右する。