金正恩氏、ポンペオ氏にも会わず中朝国境視察に邁進 祖父の命日参拝も初欠席

2018/07/11 22:22

 【ソウル=桜井紀雄】初の米朝首脳会談から12日で1カ月となる中、最近、訪朝したポンペオ米国務長官にも韓国の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相にも会わなかった金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長について、北朝鮮では中朝国境地域の視察に打ち込む姿が大きく報じられている。金正恩氏は、祖父、金日成(キム・イルソン)主席の命日にも遺体を安置した宮殿への参拝さえ伝えられないという異例の行動を見せている。

 「ジャガイモ麺やポテトチップなど多様な食品を作る設備を近代化し、おいしく栄養価の高い加工品を大々的に生産すべきだ」

 朝鮮中央通信は10日、中国との国境地域の三池淵(サムジヨン)のジャガイモ加工工場を視察した金正恩氏がこう指示したと報じた。農場や街の建設現場も視察し、党機関紙、労働新聞は10日、紙面を増やし、うち5面を三池淵視察の記事に割くという力の入れようだった。

 三池淵は金日成氏が抗日闘争を展開した「革命の聖地」とされる。金正恩氏は国際社会への対話攻勢に出る前の昨年12月や2013年に叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑する前など重大な決定を下す前に同地を訪れており、今回は経済改善に向けて不退転の決意を示した形だ。

 

 祖父や父も何度も視察に立ち寄ったことを強調しながら、8日の金日成氏の命日が過ぎても遺体が安置された平壌の錦繍山(クムスサン)太陽宮殿への参拝は報じられなかった。12年の最高指導者就任以来、参拝を欠かしたことはなかった。結果的に儀礼より実務を優先する姿勢を示したことになる。

 米朝首脳会談で合意した非核化の具体的措置を協議するため6、7日に平壌を訪れたポンペオ氏とも当初の予想を裏切って会談しなかった。ポンペオ氏は「会う計画はなかった」と説明したが、同行した米記者は「幹部らが尽力したが、実現しなかった」と伝えた。

 バスケットボールの選手団を率いて3~6日に訪朝した趙氏には「地方視察中」で面談できない可能性が伝えられていた。今年に入って金正恩氏は、訪朝した米韓や中露の要人と頻繁に対面し、気さくさを演出してきたが一転、会談を出し惜しみすることで交渉力を高める狙いがあると分析する韓国の専門家もいる。

 先月末から今月初めには新義州(シニジュ)など中朝国境の別の地域の視察が大きく報じられた。国境地域の開発に力を注ぐ姿勢を強調する裏に、中国による経済協力と制裁緩和の期待があることは確実だとみられている。