韓国野党党首が地方選ドロン 「平和攻勢」の文在寅政権と人気対決避ける苦肉の策

2018/06/13 07:00

 韓国で統一地方選を目前に控え、大車輪の働きが求められるはずの最大野党の党首が「一切の遊説を取りやめる」と宣言する異例の事態に陥っている。シンガポールでの「6・12米朝首脳会談」翌日の13日にあたった、文在寅(ムン・ジェイン)政権下で初めての統一地方選。南北融和ムードの高まりを受けて政権が高い支持率を維持する中、劣勢の野党候補者らは与野党の「党の顔」をめぐる対決になるのを避けようと躍起になっている。(外信部 時吉達也)

野党候補、党代表との合同遊説を拒絶

 選挙運動開始日の5月31日、韓国南部・釜山の街頭。保守系の最大野党、自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)代表の演説に、道行く車のけたたましいクラクションの音が重なる。「ソウルだけかと思ったら、ここにもこんな車がいるのか」。あからさまな選挙妨害に、洪代表は思わず苦笑いを浮かべた。

 洪代表の選挙運動に冷や水を浴びせるのは、対立する左翼陣営だけではない。ソウル市長など、統一地方選と併せて実施される17の広域自治体首長選で、同党の候補者らは、党代表と合同の遊説をこぞって拒絶。初めての選挙サンデーとなった今月3日も、洪代表は当初、ソウル市長選や複数の知事選の選挙区を回る計画だったが、急遽(きゅうきょ)すべての遊説日程をキャンセルした。

 

 「明日から遊説には出ません」。同日夜、自身のフェイスブックで、洪代表はそう宣言した。文大統領と自身の“人気対決”となっては勝つ見込みがないとする候補者らの意見を受け入れたと説明した上で、「今回の選挙は、文在寅と洪準杓の対決ではない。誰に地方行政を任せるかの地方選だ」と強調。与党が勝てば「この国は一党独裁に向かってしまう」と訴えた。

与党支持は過去最高更新

 「選挙に勝つためなら、やれないことなどない」と言い切り、党代表が表舞台から姿を消す異例の選挙戦略を取った最大野党。しかし、その決意もむなしく、選挙戦は与党圧勝の様相を呈しつつある。

 一時は60%を下回っていた文在寅政権の支持率は、4月27日の南北首脳会談を契機に80%近くまで上昇した。

 世論調査会社リアルメーターによると、政権支持の拡大に伴い、与党「共に民主党」の支持率は5月に56・9%を記録。政党支持率としては同社が定期調査を開始した2008年以降で最高値を更新した。一方の自由韓国党は同じ調査で17・4%にとどまっており、17の広域自治体首長選のうち、14カ所で与党が優勢というワンサイド・ゲームが繰り広げられている。

内政にほころび…若者失業者は「4人に1人」

 しかし、内政に目を向ければ政権のほころびが各所に浮かび上がる。

 

 韓国社会の最も大きな課題の一つなっている雇用問題は文大統領就任後も改善の糸口が見えず、今年3月には、失業率が4・5%を記録。17年ぶりに過去最悪を更新した。このうち10~20代の若者では、失業率は11・6%と全体の平均の倍以上になった。就活中のフリーターや公務員試験準備の学生を含めた実質値(拡張失業率)は24%で、4人に1人が失業状態というありさまだ。

 また、コンピュータープログラムを駆使した大規模な世論誘導事件に与党議員が関与した疑惑では、政権の管轄下にある検察に代わり「特別検察官」が任命され、今後捜査が本格化する。社会を取り巻くさまざまな問題が深刻さを増すなか、「南北融和」への期待がすべてを覆い隠し、与党の人気を高める役割を果たしている格好だ。

 韓国日報は与党側の選挙戦について、「地域住民の敏感な利害関係に焦点を当てて声を上げるよりも、(北朝鮮との)対話局面の追い風に便乗して平和を強調するのに重きを置いている」と指摘。「地方選挙なのに、地域の懸案の代わりに中央政治の問題が前面に押し出され、(懸案事項の政策が明示されない)“暗闇の選挙”の憂慮が大きくなっている」と危機感を強めている。