米歴代政権による対中関与策の失敗 トランプ大統領「中国をWTOに招き入れたことが間違いだった…」 古森義久

2018/03/13 07:27

 米国の対中政策がついに決定的な変革を迎えたようだ。米中国交樹立以来40年近く、歴代政権が保ってきた関与政策が失敗だったという判断が超党派で下されるようになったのである。

 関与(Engagement)とは、中国が米国とは基本的に価値観を異にする共産主義体制でも、米国が協力を進め、中国をより豊かに、より強くすることを支援し、既成の国際秩序に招き入れれば、中国自体が民主主義の方向へ歩み、国際社会の責任ある一員になる-という政策指針だった。

 ところが習近平政権下の中国は米側の関与での期待とは正反対に進んだことが決定的となった。その象徴が国家主席の任期の撤廃だった。習氏は終身の独裁支配者になれるわけだ。

 近年の中国はそれでなくても侵略的な対外膨張、脅威的な軍事増強、国際規範の無視、経済面での不公正慣行、そして国内での人権弾圧の強化と、米国の関与の誘いを踏みにじる措置ばかりを取ってきた。こうした展開が米側でこれまでの対中関与政策の失敗を宣言させるようになったのだ。トランプ政権も昨年12月に発表した「国家安全保障戦略」で対中関与政策の排除を鮮明にした。

 

 「ここ数十年の米国の対中政策は中国の台頭と既成の国際秩序への参加を支援すれば、中国を自由化できるという考え方に基礎をおいてきた。だが中国は米国の期待とは正反対に他の諸国の主権を力で侵害し、自国側の汚職や独裁の要素を国際的に拡散している」

 トランプ大統領も2月下旬、保守系政治団体の総会で演説して、米国が中国を世界貿易機関(WTO)に招き入れたことが間違いだったと強調した。中国のWTO加盟こそ、米側の対中関与政策の核心だった。だからトランプ氏は関与政策を非難したわけだ。

 さらに注視されるのは野党の民主党側でも関与政策の破綻を宣言する声が強いことである。オバマ政権の東アジア太平洋担当の国務次官補として対中政策の要にあったカート・キャンベル氏は大手外交誌の最新号の「中国はいかに米国の期待を無視したか」という題の論文で述べていた。

 「米国歴代政権は中国との絆を深めれば、中国の国内発展も対外言動も改善できるという期待を政策の基本としてきた。だがそうはならないことが明らかになった。新しい対処ではまずこれまでの対中政策がどれほどその目標の達成に失敗したかを率直に認めることが重要である」

 

 反トランプ政権のニューヨーク・タイムズも2月末の社説で主張した。

 「米国は中国を米国主導の政経システムに融合させようと努めてきた。中国の発展は政治的な自由化につながると期待したのだ。だが習近平氏の動きは米国のこの政策の失敗を証明した。習氏は民主主義的な秩序への挑戦を新たにしたのだ」

 米国の歴代政権の対中政策は失敗だったと、明言しているのだ。

 トランプ氏自身、北朝鮮への対処にからみ習近平氏への親しみを口にしたりはするが、中国への対決の基本姿勢は既に明確にした。米国のこの動きは総額6兆円以上の公的資金を供与して中国を豊かに、強くすることに貢献してきた日本の対中関与政策にも、決算の好機を与えるのではないか。(ワシントン駐在客員特派員)