議会専門紙ザ・ヒル(米国)「オバマ氏の取り組みは失敗」「敵国の戦術核使用を抑止できる」

2018/02/12 11:00

 トランプ米政権が今月2日、今後5~10年の新たな核政策の指針となる「核戦略体制の見直し」(NPR)を公表した。「核兵器なき世界」を持論としたオバマ前政権の戦略を転換させ、中国やロシア、北朝鮮などによる核の脅威の増大に対抗するため「柔軟かつ多様な核戦力」の必要性を強く打ち出した。米紙には、これを高く評価する主張がある一方、中国やロシアのメディアは懸念を強めている。

     

 米主流メディアは新たなNPRが目指す核抑止力の近代化をおおむね支持しつつも、爆発力を低減させた小型核の運用を盛り込んだことについて、「欠陥のある過剰殺傷力」(ワシントン・ポスト紙)と呼ぶなど、核戦争に発展することへの懸念を示した。だが、ブッシュ(子)政権で軍備管理・国際安全保障担当の国務次官を務めたロバート・ジョセフ氏は6日の議会専門紙ザ・ヒル(電子版)で、こうした論調を「古くさい非核左翼の批判」と切り捨て、実際にはNPRで効率的な抑止が実現されると主張した。

 

 ジョセフ氏は、米中枢同時テロ後、米国が対テロ戦を重視する間に、ロシア、中国、北朝鮮が核・ミサイル能力を拡大させ、米国の脅威になったと指摘した。また、オバマ前政権が一方的に進めた核軍縮にロシアなどが従わなかったことで米国の優位性が損なわれ、今後、「同盟国に対して保証している(核の傘を含む)拡大抑止への信頼性が疑問視されることになる」との認識を示した。

 こうした観点から、ジョセフ氏は「核兵器なき世界」を掲げたオバマ氏の取り組みを「失敗」と断じ、むしろNPRの方が「過去の米国の核政策と一貫性がある」としている。特に、NPRが(1)潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の弾頭の一部を小型核として運用(2)核弾頭を搭載した海洋発射巡航ミサイル(SLCM)再配備-の2点を提案したことは「重要な改善点」であり、敵国の戦術核使用を抑止できるとした。

 米ジョージタウン大のマシュー・クローニグ教授はNPR発表前のウォールストリート・ジャーナル紙への寄稿で、ロシアが戦術核で欧州の同盟国を攻撃した場合、米大統領には戦略核による全面的な核戦争か降伏かの選択を迫られるとし、限定的な核攻撃能力によって、ロシアの先制核攻撃は抑止できると指摘した。(ワシントン 加納宏幸)