「日本軍『慰安婦』の声」の「世界の記憶」登録 公正透明な審査を 明星大特別教授・高橋史朗

2017/09/13 08:00

 ユネスコの「世界の記憶」に中韓などが共同申請した「日本軍『慰安婦』の声」文書(以下、Aと略す)の登録の是非をめぐる審査が重要な段階を迎えている。

 Aと同一の文書が含まれている「慰安婦と日本軍規律に関する記録」文書(以下、Bと略す)をユネスコに申請した日本の保守系団体が8月23日、両者の協議を要請するオープンレターをユネスコ事務局に送った。

 同団体によれば、「申請内容と関係ないか申請内容と一致しない文書が混入されている可能性」と「複数の申請が同一文書をお互いに両立しない分類でノミネートされる可能性」があるという。申請の主要目的を記述する申請書の「要約」欄には、慰安婦の定義について、次のように記述している。

 A「1931年から1945年にかけて日本軍のために強制的に性奴隷とされた婦女子を指す婉曲(えんきょく)表現」

 B「戦時中から1945年にかけて日本軍のために、その後日本に駐留した連合国軍のために務めた女性」

 また、申請目的について次のように述べている。

 A「申請資料は歴史的世界的価値があり、人権平和教育のためにもなる」

 B「慰安婦についての誤解が蔓延(まんえん)しており、正しく理解されるべきだ」

 

 ユネスコはこの定義や申請目的と矛盾する文書が、主張を裏付ける文書として混入されていないかを厳しくチェックしなければならない。

 AとBには、米国立公文書館所蔵の以下の同一文書が含まれている可能性が高い。

 連合軍翻訳通訳部(ATIS)の記録や東南アジア通訳尋問センター(SEATIC)が作成した日本の戦争犯罪人の宣誓証書等である。米陸軍が1944年にビルマで捕虜にした慰安婦の尋問報告書第49号は、慰安婦は「娼婦以外の何者でもない」と記し、「豊かに暮らしていた」と書かれている。

 これらの同一文書から導き出されるAとBの解釈は完全に異なっている。世界の記憶事業は歴史の審判や解釈を行うものではないとの基準に照らせば、ユネスコには公正中立的な取り扱いと透明な審査が求められる。

 米国立公文書館所蔵文書は「性奴隷」を立証するものではないにもかかわらず、Aは「性奴隷」の証拠資料として申請。

 またAが日本軍の慰安婦制度は「ホロコーストに匹敵する戦争悲劇」と強調していることは、歴史の審判や解釈を行うものではないとの「世界の記憶」の基準に明確に違反している。

 

 カナダ・イスラエル協会は昨年10日30日、次のような意見書をユネスコに送っている。

 「『慰安婦』はホロコーストであるという概念は現実的には根拠がない。…慰安婦問題は完璧な宣伝戦の道具であり、中韓が競争相手に対して敵意を生み出すための道具として使われている」

 8月6日付産経新聞によれば、共同申請に加わっている英「帝国戦争博物館」所蔵文書には、Aの定義に明記された「強制的に性奴隷にされた」慰安婦であったことを客観的に立証する資料はなく、慰安婦が「公娼」であったことを示唆する日本軍の公文書も含まれていた。

 このような矛盾が他にもないかユネスコは厳しくチェックする必要があり、対立する関係者の対話を促す措置を講じるべきである。

 共同申請の登録を勧告する不当な決定が行われ、対話要請にすら応じないのであれば、わが国はユネスコの拠出金凍結を含む断固たる対応をとるべきだ。

                  

【プロフィル】高橋史朗

 たかはし・しろう 元埼玉県教育委員長。明星大特別教授のほか、麗澤大道徳科学教育センター客員教授。親学推進協会会長。男女共同参画会議議員。