なぜ「今上天皇一代限りの特例法」の結論先にありきなのか? 第3回<新春対談4>

2017/02/21 10:40

菅野 完
古谷 経衡

 『日本会議の研究』(扶桑社新書)で、「日本会議ブーム」の先鞭をつけた菅野完さんと、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮新書)などの著作で気鋭の論客として注目される古谷経衡さん。問題意識や関心領域は重なるところが多そうなお二人ですが、実は今回の対談が初顔合わせ。
 いまお二人に語り合っていただくならこれしかない!  ということで、「日本会議」「憲法改正」「天皇退位」の3大テーマで、ガッツリ議論していただきました。
 最終回の第3回は「天皇退位」。先に結論ありきのように見える政府の方針は、どこから来ているのでしょうか? 
 (構成:岡田仁志 写真:牧野智章)

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■本物の保守・右翼が言うべきは「お上の仰るとおりに」の一言
 菅野 憲法改正よりも喫緊の問題は、天皇の御譲位ですよね。今上天皇の譲位に限定した特例法をつくった上で、2019年元日に改元するというのが、政府の方針らしいと報じられましたが、前回も話したとおり、「保守」も「ホシュ」も、この問題については意見がバラバラでまとまりません。恒久的な生前譲位のために皇室典範改正を主張するのは少数派で、「ホシュ」には退位そのものを認めたくない人も多い。

 古谷 皇室典範をいじると、女系容認(*)にまで突き進んでしまうという恐怖感があるんでしょうね。「万世一系が壊れる」とか「遺伝子に支那人や朝鮮人が入ってしまう」とかトンデモなことを言って、女系に反対する。
 すでに天皇陛下が「桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫と続日本記に記されていることから、韓国にゆかりを感じる」とご発言されているのに、自分たちに都合の悪いことは、天皇陛下のご意向であっても、無視してしまうわけです。

 *女系天皇――母方だけが皇統(天皇の血統)に属する天皇。女性の場合も男性の場合もある。
 女帝――女性の天皇。女系の場合も男系の場合もある。
 皇室典範第1条には「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」とあり、皇位継承をめぐっては、女系を認めるか、女帝を認めるかという論点がある。

 菅野 まともな「イズム」を持っている本物の「保守」や「右翼」であれば、みんな「お上の仰るとおりに」となるんです。

 古谷 真っ当な右翼とはそういうものですよね。それが大御心(おおみごころ)であるなら、皇室典範を改正するしかありません。

 菅野 皇室史の第一人者の所功先生が、うまいことを仰いましたよね。「皇室典範は皇室の御家法なのだから、皇室会議の了承を得てお決めになればよいことで、われわれが口を挟むことではない」と。

 古谷 まったく正しい見解です。

 菅野 これに対して、「イズム」のない「ホシュ」の人たちには、女系天皇に道を開くことへの恐怖感がある。その根っこにあるのは、やはりミソジニー(女性蔑視)だと僕は思います。だから彼らは、女系天皇どころか「男系の女帝」にさえ本音では反対でしょう。
 このまま東宮が践祚(せんそ 天皇の位を受け継ぐこと)された後、万が一のことがあれば秋篠宮様が即位されるわけですが、そうなると、現行の皇室典範の規定では、次の天皇は悠仁様になります。「愛子様はどうするんだ」という国民世論は、必ず出てくるでしょう。